どういうことか、まるで分からない。
 だって、フェンリル族は大勢殺されてしまったじゃないか。

 なのに何で、彼だけがフェンリルの生き残りに関係する?



『しかもグレイアは、ずっと前からフェンリル以外の古代種を助けてたのさ。

 その小屋には地下室があって、――古代種だけが、生き残ってた』



 ―男女、一匹ずつ。―



 その言葉で、私は悟った。

 古代種を殺し、しかし古代種を救う。

 やり方なんて、限られている。

 そう、やり方は存在している。不可能じゃない。



「クローン、か?」

『まぁ、そんな感じの所だな』



 仮に卵子や精子だけでも、手に入ったなら。もしくは、残っていれば。

 そうか、ひぃ祖母様は、一族に従いながら、着々と己の野望を進めていたのか。


 種の保存。誰かが謳っていそうな、なんて単純な野望。



『水棲族【ネプツニウム】、夢魔族【ドラクロワ】、幽霊族【ハロウスト】、

 人魚族【リウ゛ァイア】、蛇族【ヨルムンガンド】、そして吸血鬼族【トランシルバニア】。

 その他にも希少な古代種が大勢いたよ』



 聞いたことのある、名称だ。

 今では正式に絶滅とされたはずの種族も、中には含まれていた。

 まさか、それらが生き残っている可能性があるというのか。

 いや、しかしひぃ祖母様はもうこの世にいない。

 彼らは一体、どうなったのか。

 それにクローンと言ったって、簡単に出来るものじゃない。



「…ひぃ祖母様は、成し遂げた、のか?」
『いいや、はっきり言ってグレイア 一人じゃ無理だった。

 だからあいつが考えたのは遺伝子情報の半永久的保存。

 ぶっちゃければ、細胞の冷凍保存』



 えっ、それじゃあ、つまり。



『グレイアは、自分の力では到底こんなに多くの古代種のクローンは作れないと、分かってた。

 だから後の世代に託すことにしたのさ。研究資料だとかも、全部置いてね』

「えええ゛!?」



 まさか、家が燃えてしまった時、それらも焼け尽くしたか!?

 ひぃ祖母様は、それを一体ドコに隠していたのだろう。

 青ざめて絶句する。



『あー大丈夫だって。

 あいつはグレイプニル家には何も残してなかった。そんなこと、危険過ぎるだろ?』



 よっ、良かったぁ…。



 私の考えをよんだらしいフェールが、付け加えてくれた。

 胸を撫で下ろし、膝の力が抜けかける。

 本当に肝が冷えた、あーもうビックリしたなぁ。



『だがな、良く考えてみろ』



 ふっ、と、声が沈む。

 フェールの表情が歪んだ。その顔、合ってないよ。

 あんたには、ね。



『俺は、仲間を殺された。目の前にいる女にな。

 いくら説明されたって、そんな女の野望なんて知ったこっちゃない。

 他の古代種達はもう、グレイアに心を許してたが――…俺は、違った。

 信用するなって、本能が言い続けてたよ』



 あっ――、そ、っか。

 殺し合いをしていたのに、気が付けば見知らぬ場所に連れて来られてて。

 しかも古代種がワンサカと保護されてて。

 そして説明されたのが、クローン。

 とんとん拍子に、頭は追い付いてくれなかっただろう。



『ずっと頭を巡ってたのは、何で仲間と一緒に殺してくれなかったのか、ってこと。

 人間に絶滅させられることだって、結局のところ俺達一族が弱かっただけの話。

 それならいっそのこと、死んだ方がマシだ。

 人間に助けられて、喜べるかよッ』



 その時、思い出した言葉。フェールがココで過ごすことになった時の、彼の一言。


 ― 人間なんて魔物見たら銃ぶっ放すか、

         攻撃魔法で殺すくらいの対処しかしないと思ってたから ―



 人間に対する彼の敵意は、半端なものじゃなかった。



『けど、そんな俺にグレイアは何て言ったか分かるか?』



 フェールが、笑う。

 どこか自嘲を含んだ、寂しそうな笑み。





 ―えぇ、そうよ。

  全ての原因は、あなたの救いようのない弱さと愚かさにある。

  ちゃんと分かってるじゃない。

  そんなに死にたいなら、グチグチ文句言ってないで、

  とっととその牙で舌でも手首でも、噛み切ればぁ?

  私はあなたの精子くらいしか必要としてないんだもの。

  あなたがここで死んだって、全っ然 構やしない。

  あっはっはっ、っていうか逆に死んでくれた方が抵抗されずに

  精巣に注射器をブッ刺して、精子を採取出来るから、楽なんだけどぉー?―





 うわぁ、憎たらしい。

 頬が引き攣る、仮にも殺気という名のペンキに塗れた狼族に向けて、言うものではない。

 しかもどうやら、ひぃ祖母様はそう言いながら笑ってたようだ。

 何て、人。



『人間の、しかも女から そんな言葉を浴びせられるとは、思ってもなかった。

 なんか、そう言われたら簡単に死んじまうってのも、腹が立つ。

 この女の思惑通りには、絶対死にたくはないって。

 ただの、馬鹿だったんだな。俺は。あの時から』



 うわー。本当に馬鹿だ。


 フェール、お前がそう思ってしまったことこそ、ひぃ祖母様の思惑通りじゃないか。

 精子や他の細胞の採取は簡単ではない。

 もう新しく細胞が生成されなくなった死体から取るなど、さらに一発勝負になってしまう。

 ひぃ祖母様に、まんまとノセられたな。



『それからしばらく俺は檻に容れられて、体の回復を待ってから、改めて詳しく説明された。

 クローンを作る意味は、他にもあるんだ、って』



 あら? 他にも理由が?



『グレイアの考えていた種の保存。それがどんなものか、分からないだろ?』



 ひぃ祖母様にとっての、種の保存?

 え、ただ種族を生かしていくというか、絶滅しないようにするだとか、

 そんなモンじゃないの?



『あいつは【近親】を止めさせたかったんだよ。

 古代種において行われている 【絶対血統】 を断絶させたかったんだ』



 うっわー、忘れてたよ。

 そうだ、古代種にはソレがあった。



 絶対血統。


 それは主な古代種が、他の血が一族に混ざることを恐れ、

 近親でしか子を繁栄させなかったために起こってしまった、最悪の循環。

 多くの争いで数が減ってしまったにも関わらず、

 そんな考えに こだわってしまった結果、古代種はさらなる衰退を辿って行った。

 遺伝子異常を持って生まれる子が増え、それ以上 繁栄出来ない種族が出現したのだ。



『特にフェンリルとトランシルバニアは酷い。もう手遅れに近いんだ。

 俺の世代より後に、フェンリルはもういないかもしれない』

「―――…」



 トランシルバニア、もなのか。

 あの何でも屋の吸血鬼も、もしかすれば。

 いや、今は彼のことまで考えられない。

 首を軽く横に振った。フェールにだけ集中しなければ。



『グレイアに精液を調べてもらったが、俺は自分の子供を持てる可能性が限りなく低い。

 生殖機能が正常に働いてなかったんだ。今までのフェンリル一族の行いが原因なのは……明らか過ぎる』



 目を、瞠った。



 まさか、そんなッ。

 口を手で押さえて、体をフェールに向ける。

 生まれた瞬間から、彼は絶望的に子供が作りにくい体だと、決定されてしまったのか。

 もう彼の体はどうしようもないのか。

 彼は、何もしてないに。

 先祖の罪は、子孫が背負わなければイケナイのか。



 罪の代償を彼が払わなければならないなどと、決められるモノなどないはずなのに。



『おっ、おい、お前が泣くこたぁないだろ?』



 だって、だってさぁ。

 何だか分からないけど、ボロボロ 涙が落ちるんだ。

 フェールの顔をまともに見られない。胸がキリキリ痛んで、どうしようもない。

 動揺したフェールが慌てて傍に来てくれたけど、彼だってどうしようもないのだ。



 色んなことが悲しすぎて、重すぎて、支えキレなくなってきたみたい。



『そっ、それに、良く考えてみろ。古代種なんて本当は絶滅した方がいいんだ。

 俺を含め、ヤベェ能力 持った奴ばっかだしな』



 自虐的。

 余計に ぶわっ、と涙が溢れる。今のタイミングでフェール、その言葉はないだろ。

 しかしフェールは、そんな私の様子を見て、安堵しているように見えた。

 グチャグチャな視界に、困った笑いを浮かべた彼。



『――…だけど、グレイアはそれを許さなかった。

 あいつがクローンを作ろうとした目的は――』



 ──他の種族との交配─────



 ハッと、フェールの言葉に顔を上げる。



『古代種の血で、他の魔物達が生きながらえるように、したかったのさ』

「ぞっ、ぞんな゛、ごど」

『いいか、良く聞け』



 そしてそのまま、顔の両サイドをガッシリ手で掴まれる。

 涙が弾けて乾けば、フェールの真剣な眼差しが映った。



『もし仮に、俺がその少ない確率で誰か別の狼族との間に子供が出来れば、

 その子供は半分だけフェンリルの血を受け継ぐ。

 巨狼化後の力はそれだけで、半減してしまう。

 だがフェンリルの持つ身体能力の高さや本能は、半分あるわけだ。

 そんな子孫をクローンの力で多くの狼族で残せれば、狼族達の生存能力は跳ね上がる』



 生存、能力。

 確かに古代種の血が拡がれば、他の魔物達は より強い遺伝子を残せる。

 うわー、ということは今までよりさらに、相手し辛くなりそうだ。

 いや別に、私は魔物と戦ったこと無いんだけどね。



『そしてまた、人間達への対抗力も、跳ね上がる』



 ――…ん? 人間達への、対抗力も?



『古代種殲滅ってのはな、他種族に対する見せシメだったのさ。

 グレイプニル家や他の人間達に、魔物殲滅を行おうとしてる輩が増えて来てんだ。

 分かるか? 全ての魔物が今 危機にひんしてる。

 表立ってないが、確実に一部の人間達は策を練ってんだよ』



 え゛ーッ!?

 魔物を殲滅だって!? そんなことをやろうとしてる人々がいるだと!?


 なっ、なる、ほど。

 だから、ひぃ祖母様は古代種をどんな形でも良いから出来る限り、生き残らせて、

 その血を拡げさせたかったのか。

 けれど、その事実は信じたくなかった。

 信じなければ、ならないけど。


 まさか私と同じ人間が、魔物を皆殺しにしようとしてるなんて。



『グレイプニルがそんな状況になってたなんて、俺、知らなくてさ。

 だけどそれでも、不穏な動きってのはあるんだ。油断は出来ないな、魔物は全員。

 いつ人間にやられるか、分からない』



 こんなヘンピな所に住んでいれば、普通の情報すら私の元には届かない。

 新聞だって、取ってないし。

 そんな裏の動きなど、知る由もない。

 ただ、あまりにも無頓着過ぎたのかもしれない。もっと気にしておくべきだった。

 後悔など、何の役にも立ちやしない。



『分かったか? グレイアは古代種達から何とか生殖機能のまともな遺伝子を見つけ、

 それでクローンを作り、他の一族達と交配させたかった。

 そうすることで、古代種の遺伝子も生き残る。

 他の魔物も、生き残る。

 その研究資料のアリカを、俺を始めとして保護されてた古代種達は全員 知ってる』



 その場所は、きっと今もちゃんと存在してる。

 ひぃ祖母様が後世に遺すことを決めていたなら、魔法でそれなりの対処をしているだろうから。

 そして、その場所に最も辿り着かなければならない存在など、限られている。

 ならば、その前にはっきりさせておくべきことが、ある。





「何で、お前は、ひぃ祖母様を? そこまで、分かっておいて、何で…?」





 当然の、疑問。


 聞きたい。聞きたくない。

 相反する思いは胸に封じる。ただ、私が聞くべきは事実だけ。

 きっと私から尋ねなければ、フェールは言わなかったかもしれない。


 いや、違う。言えなかった、かもしれない。



『――…一度』



 ほとんど、聞き取れない。

 か細くなる声、先程までの力強さは掻き消える。

 フェールの表情が、死んでいく。



『本当に、一度だけ、俺は暴走、しちまって、その地下室の中で』



 私は、フェール、お前のそんな顔なんて、見たくはないんだ。

 一気に喋りきってしまうのを躊躇うような、詰まりながらの言葉。



『言っただろ? 同じ空間に、トランシルバニアがいた、って。』



 男女、一匹ずつ。

 さっき、フェールはそう言った。

 男女のクローンを作った方が、子孫を他の種族で増やしていくのにも、効率が良い。

 ひぃ祖母様は、きっとそう考えていたのだ。


 しかし、それは危機を招く可能性も高くさせる。



『俺じゃない、女のフェンリルが、始めにおかしくなっちまって』



 狼族の、本能。

 そこで、あの何でも屋の吸血鬼に襲い掛かって行ったフェールの姿を思い出す。

 まさに、あの状況が再現されてしまったのだ。



『男女のトランシルバニアに、襲い掛かって行って、

 俺だって必死に本能 押さえ付けてたけど、無理だった。

 女のフェンリルに、感化されて、俺も――。

 きっと、そいつだって、必死だったんだ。

 周りの古代種達は手が出せなくて、ただ一人、動けたのが』



 ひぃ祖母様、だったのか。



 何で、そんな――。

 彼らは一緒にいたくていたわけじゃない。

 ひぃ祖母様だって、彼らを一緒にさせたかったわけじゃない。



『フェンリルのトランシルバニアに対する本能くらい、

 グレイアは知ってた。その地下室だって、配慮されてたんだ。

 ちゃんと、ちゃんとッ、制御装置だって付けてッ、……ちくしょう…っ!!』



 誰も、悪くないじゃないか。



 壁を殴り、それ以上言葉が続かなくなるフェール。

 絶句して、青ざめる私。心臓が破裂しそうなのは、どちらも同じ。

 痛みの連鎖が止まらない。



『決定打は、俺の牙だった。グレイアの首が――喉が、引きチギられて、

 …俺が、引きチギって、血が、噴き出して、止まらなかった。
 でも、それで全員の目が覚めて、他の奴らが、別の制御装置はめてくれて、

 ……――でも、グレイアは治癒魔法すら、唱えられなくて』



 喉が砕かれてしまえば、唱えようがなかっただろう。

 けれど、彼女の鮮血が、彼らを止めた。

 ひぃ祖母様はきっと、フェンリルとトランシルバニアの起こす事態など、

 想定していたはずなのだ。

 おそらく彼女の血には魔法がかけられていたはず。

 髪や血といった、常に体を巡るものほど、魔女にとって最高の武器はない。

 魔力を常日頃から込めることが出来るものは、窮地を救ってくれる。


 けれど、果たしてその場で救われたモノが、いたのだろうか。



『俺が、コロシ―…』

「そう、殺したんだね」



 今、フェールを救えるものなんて、あるだろうか。



「フェール、あなたが、ひぃ祖母様を殺した」



 こんな私のチッポケな言葉が、彼を救うだろうか。



「なんて、言えばフェール、お前は、満足するのか?」



 こんな私ごときが、彼を救えるだろうか。



 唇が震える。私だって、どうして良いのか分からない。

 さっき散々、本から現れたひぃ祖母様の魔法が、フェールへ罵声を浴びせた。

 フェールの所業を、ひぃ祖母様が一番どうしようもなかったと、

 分かっているはずだったのに、だ。

 つまりアレは、フェールの気持ちをくんだ言葉達だったのだ。

 フェールは決して、赦しを求めてはいないから。

 それを分かっている上で、ひぃ祖母様は彼を赦そうとしていた。


 そして、その役割を私に引き継がせたのだ。



 さっきの、まるで禅問答のような私とひぃ祖母様の会話。

 あれは、私がフェールを導けるかを判断するための、ひぃ祖母様の策略だったのかもしれない。



「フェール、お前、ずっと後悔して来たんだろ? 仕方ない状況だったのに、

 ずっとひぃ祖母様のことを考えててくれた。

 それだけで、充分だ。

 それにさっき、お前はこう言ってたじゃないか」





 ― 人間に絶滅させられることだって、結局のところ俺達一族が弱かっただけの話 ―





「なっ? ひぃ祖母様がお前に殺されたのも、ひぃ祖母様が弱かっただけの話。

 フェンリル種を、自分が殺されてでも守ろうと考えたのは、ひぃ祖母様だ。

 それだけの、ことだ。それ以上、何もない」



 ねぇ、そんなことで、世界が崩壊したりなんか、しないだろ?

 たった一つ、この広い世界でたった一つの命が消えたからって。

 世界の流れが、変わるわけでもないじゃない。

 だから、大丈夫だよ。

 フェール、だからさ。



「別に、ひぃ祖母様を殺したことを、忘れろとは言わない。後悔するな、とは言わない。

 赦してやることも、私には出来ない。

 でもさ――お願いだから」



 私の知ってるフェールに、戻ってよ。



 もうそんなこと、無理なことは分かってるけど。それでも、頼むから。

 弱気なあんたなんて、見たくないんだ。

 身勝手なことを言って悪いと思う。でも、今フェールに望むことはコレなんだ。

 フェール、そんな顔しないでよ。

 泣きたい気持ちを、置き去りに出来はしない。叫びたい衝動を、抑えこむのは至難の技。

 頭と胸をグルグル巡る気持ち悪さ。全身に突き刺さっていく、重い感情。



 こんなに私達が辛くカナシイ想いをしても、ただ広がっていく空には、何の関係もないのだ。



「あーぁ、お腹空いたなぁ。お昼も過ぎちゃったし。どーする?」



 笑え。

 だから、笑え。笑い続けろ。こんなカナシイもの、笑い飛ばしてしまえ。

 嘘でも良い、引き攣ったって良い、泣きそうでも良い、笑うんだ。

 笑え、グレイ=ロヘルキ=グレイプニル。

 ひぃ祖母様、果たしてこれで、彼は救われますか?



『お、れは――』



 顔を伏せて、フェールが無言から解放された。

 そこに涙が混じってたことは、分からなかったことにする。



『カボチャシチュー、食いてぇな』



 掠れる声。零れた鳴咽。

 小さな応答を、手の平で掬って、優しく握った。



「りょーかい」



 ほら、見事元通り。

 私達の日常は、決して壊れはしない。

 そういえば外の倉庫にカボチャがあったはず。昼ご飯兼晩ご飯のメニューは決定。

 この時間から作り始めたら、なかなか美味しいものになりそうだ。



『グレイ』



 ふと、耳に届いた名は、今の私達を表現した、色の名。





『悪、かった』





 あぁ、ありがとう、じゃないのね。



 ねぇフェール。この時に私は分かってたのかもしれないんだ。

 その声色に含まれたモノや、これから何が起こるか。

 急に鼻の奥が熱くなった理由だって、分かってたのかもね。

 フェール、それでも私にはどうすることも出来ないよ。

 お前の想いまで操作することなんて、私には不可能だから。






 嫌な予感。そんなものが胸を過ぎったんじゃない。

 過ぎったのは、ひとりぼっちの寂しさだ。