虹は彼の地へ 王子を誘う
黄砂のお城に おはします
幼き王子 砂色の髪の毛
砂塵の舞う 世界へ生まれ
月が唯一の 友達となる
やって来る 異形のキャラバン
見たこともない 献上品を揃え
王子が手に取り 品定めすれば
金銀財宝を 褒美として与える
その中で 見つけた
鈍色の ペンタクル
華のように 開く先
銀河の渦巻く 宇宙
王子は覗き込み 吸い込まれる
飛び込んだ 原子の世界
太陽で焼いた 目玉焼き
目覚まし代わりの 彗星
目隠しをする 暗黒物質
はしゃぎ 王子は泳ぎ回り
砂のお城 置き去りにした
空っぽの 寂しい大広間に
残されている ペンタクル
緩やかに 風化する
王子が 帰って来た頃には
ペンタクルは 砂に埋もれ
お城は 跡形も失くなって
ただ月だけが 王子を見る
髪の毛につく 砂を払いのけ
王子は笑って 月を見上げる
一時の楽しみだけ 胸に秘め
泣きそうな顔で 笑い続けた